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第10回 ペナルティーキック雑感 ――PKについて

向かって右のゴールポスト。
そして、ボール。
その延長線上に立つ。
ボールからの距離はちょうど11歩。
GKのへそあたりを見ながら助走。
ボールとGK、両方を視野に入れる。
狙うコースは、常に決まっていた。
絶対に、向かって右上か右下。
GKがもしそちら側に動いたら――。
コースを向かって 左に切り替える。
腰と蹴り足を内側に巻き込むことで、 瞬時にコースを変化させることは、十分可能だった。
何度も何度も蹴ってようやく見つけた自分だけの助走角度、そして「型」だ。

頭部分は、初めて明かした僕の 企業秘密です。
読者の皆さんなら、すでにお分かりでしょう。
これが僕の現役時代のPKの「型」でした。

PKの蹴り方は、キッカーによって異なります。
キックの瞬間までコースを決めずに、GKだけを見ているタイプ。
逆にGKは全く見ずに、あらかじめ蹴る方向を決めておくタイプ。
何も考えずに、力任せに枠内に蹴り込む選手もいます。
でも、PKの蹴り方に、万人にとっての正解はありません。
入れれば勝ち。外せば負け。ただ、それだけです。

僕は結果として、PKの「型」を持つに至りました。
きっかけは、修徳高校時代にさかのぼります。
高校2年生のときに出場した高校選手権1回戦、京都商高戦のことでした。
試合は0ー0でPK戦にまでもつれ込みました。
当時、僕は2年生でしたが、チームの中心選手という自負もどこかにありました。

サドンデスで迎えた7人目。
周りから「次は北澤が蹴って当然」という雰囲気も感じていましたが、
僕はどうしても蹴ることができませんでした。
怖くて怖くて仕方がなかったのです。
代わりに「蹴りに行く」と手を挙げてくれたチームメイトがいて、
正直ホッとしたのを昨日のことのように思い出します。
そしてその彼が外し、僕たちの選手権は、終わりました。

そのことを僕は、今まで後悔し続けることになります。
なぜあのとき、蹴りに行く勇気が持てなかったのか、自信が持てなかったのか。
翌日から、必死でPKの練習を始めました。
練習して、練習して、練習した結果、自分の「型」と呼べるものが身に付くことになりました。
それから先、PKの場面では、どんな状況だろうと自分から手を挙げることを心に決めました。
手を挙げなかったことは一切ありません。自分が全力で戦ってきたはずの試合で、
勝負を決める場に立てない後悔をするくらいなら、蹴ろうと決めました。
決める、外すは別の話。自分が全力でやってきたことに対して
「ケリをつけにいく」というつもりで、PKに臨んでいたように思います。

26日のACL、川崎FがPK戦の結果、準々決勝で敗れ去りました。 外したのは、谷口博之選手でした。
それに関してチームメイトの森勇介選手が「タニ(谷口)は、チームのために一番走って、
一番疲れていたから外した。だからアイツは悪くない」と語ったそうですね。
僕も、そう思います。頑張ったから、PKまで行った。必死にやったから、蹴る役割が彼に回ってきたのです。
森選手の言葉には温かさがありますが、それを聞いた谷口選手はさらに責任感を強く持つことになるでしょう。
1 人になれば、谷口選手はきっと「チームに迷惑をかけたな」と思い出します。
そして、「次はもっと走ろう。森のために、チームのために走ろう」と思うはずです。
そうした一人ひとりの心がけが、どれだけチームを強くするか、想像してみてください。

ジーコも、ロベルト・バッジオも、アンドリー・シェフチェンコも外すのがPKです。
勝ってつかむものは確かに大きい。そして同時に、苦い経験からも大いに学ぶことができるのが、サッカーです。

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