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第9回 季節外れのヒマワリたちに ――2007年、夏の終わりに

2007年の夏は、記録的な猛暑となりましたね。
僕自身、8月生まれということも関係しているのか、夏は子供の頃から一番大好きな季節でした。
時間的に開放されて自分の好きなことができる、ということはもちろん、自分が「変身」できるチャンスの季節だ、と本能的に感じていたのだと思います。
目標を持たないまま、何となく過ごしていると、夏はあっという間に終わって2学期が始まってしまいます。

僕はトライすることが大好きですから、「ここで頑張って、何かみんなと差を縮めてやろう、差をつけてやろう」と考えてきた気がします。
ただし、こと勉強に関しては「ほどほどに」という少年時代でしたが…。
振り返ってみても、夏は一番サッカーがうまくなった時期だったと思います。
毎日繰り返し練習ができるからです。今日が終われば明日がある。試合数も多いから自分自身で気がつくことも多かった。
実際に、子供たちのサッカーを見ていても、一日一日の変化が大きい季節だと実感しています。
それこそ、ヒマワリがぐんぐん伸びるように、木々が空に向かって生長していくように、です。

さて、今年の夏は僕も全国各地を走り回りました。
03年の現役引退後の夏としては、最多と言っていい数の「サッカー教室」を行ないました。
そうした中で、たくさんの子供たちの「顔」に出会いました。友達と一緒にボールを蹴るのはいつどこでだって楽しいから、多くの子は笑顔です。
でも「ここで、一つでも何かを得て、うまくなってやろう」と考えている子供の顔は、また一味違います。

今年、一番印象的だった「顔」は、8月11日に東京・西が丘で行なわれた「第31回全日本少年サッカー大会決勝」での子供たちの顔です。
あの日もとんでもない暑さでしたが、一人ひとりの表情を見ると「暑い。苦しい」という顔をしている子供は、一人もいませんでした。
暑いから動けない、というようなプレーも一度もありませんでした。試合が、大人顔負けの好ゲームになったことも当然でしょう。
こればかりは「暑いからって、あきらめるな」といくら周りが言っても、無理な話なのです。
それを「向上心」という言葉で表すこともできますが、それは多かれ少なかれ、誰もが持っているもので、
その強さの度合いは表情や行動に自然に表れてくるからです。

この夏、たくさんの子供たちと触れ合っていく中で、あらためて感じたことは「できる子が多い」ということでした。
ただ、その「できる」というのが子供たちの中での「100%」ではないことが多いのだな、ということにも同時に気づきました。
つまり、まだ伸び盛りなのに「自分はこういうプレーヤーだ」と自分で決めつけている子供が多い、ということです。
知らず知らずのうちに自分に限界を 作って、自分が決めた枠組みの中で、プレースタイルを確立してしまっている。
「もっと君はこんなことができるんだよ」と、子供たちに気づかせてあげられれば、彼らはもっともっと伸びていくことができます。

この暑い夏に、今の自分の殻を破ろうと、必死になっていた子供たちには、きっと「ご褒美」が待っています。
これから迎える秋は、1年で最も体を動かすにはいい季節。夏に頑張った彼らは、季節外れのヒマワリのように、きれいな花を咲かせるはずです。
逆に今年の夏、「サボってしまったな」と感じている小学生。大丈夫、今日からその差を埋めるよう頑張ってください。
決して自分の「スタイル」を決めつけずに、もっともっと違う自分に「変身」できるように、目の前のことに取り組んでみてください。
大丈夫。君たちには、十分時間があります。暑い夏もまた、すぐにやってきます。

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