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第3回 なぜ、歩み寄れたんだろう? ――パラグアイにて(Paraguay) >>そのときの写真はコチラ

少しシリアスな話が続いたので、今回はやや毛色の違ったテーマについて書きたいと思いました。今回はパラグアイでのお話です。  
2月1日から12日まで、JICA(国際協力機構)のオフィシャルサポーターとして、南米のパラグアイ、エクアドルを訪問してきました。
「南部看護・助産継続教育強化」の活動視察。アスンシオンにある日本パラグアイ人造りセンターの訪問。
南米サッカー連盟(CONMEBOL)本部の表敬訪問。
そしてパラグアイ・リーグの視察(元横浜Fのアマリージャさんが同行してくれました!)など、今回も貴重な経験をさせていただきました。

そして、僕の今回の南米訪問にはもう一つ楽しみな目的がありました。サッカー教室です。
サッカーの本場、南米で自分のサッカー観をどこまで伝えられるのか。僕にとっては「真剣勝負」の場でした。
子供たちに、サッカーでどういうふうにアプローチをしていこうか、とずっと考えていました。
ところがです。僕の相手は子供たちではありませんでした。子供たちの指導者だったんです。

サッカークラブに着いたとき、コーチ陣に「歓迎されていないな」ということは雰囲気で感じました。
日本でサッカーをやっていたヤツに何ができるんだ、と見下された態度を取られたのはまだいいとして、
僕が預かった子供たちの練習スペースを無視して、レギュラー組の子供を集めてフルコートでゲームを始めてしまう始末。
これでは僕が指導させてもらえるスペースがありません。仕方なく、フルコートのゲームを見学することにしました。
確かに、うまい。きっちりとした決まり事があって、コーチが一つひとつのプレーに対して細かく指示を加えていきます。
ただ、うまいけれど、子供たちは少し窮屈だろうな、とも感じていました。

やがて、何人かの子供たちが両手にたくさんトロフィーを持って、僕に見せに来ました。
「どうしたんだい?」 と尋ねると、 「コーチに『あの日本人に見せて来い』って言われて持って来ました」
部外者の指導なんて必要ないし、自分たちは十分に強い、という意思表示です。
さて、どうしたものか…。僕は「判断力」のトレーニングをしようと決めました。詳しい内容は省きますが、簡単に言えば二人のコンビネーション。
無数に立てたカラーコーンを相手に見立てて、それを二人で回りながら、パス交換でボールを運んでいく、というトレーニングです。
僕はそこにちょっとした仕掛けを加えていました。「自分たちで考える」という作業と、
声を出して自分の意思を相手に伝える「コミュニケーション」がないと、うまくいかないようなトレーニングにアレンジしたのです。
僕は、子供たちが何度失敗しようと、黙ってその様子を見つめることに決めました。彼らに解決方法を見つけてほしかったんです。

しばらくすると、コーチがこちらにやってきました。なかなか、そのトレーニングがうまくこなせない子供たちを見て、かなりいら立っている様子でした。
コーチが業を煮やして、子供たちに指示を出し始めます。 「違う!そのタイミングじゃない!」 「いまだ! いま出すんだ!」
僕はコーチに言いました。 「すみません、黙っていてくれませんか。この子たちは、いま自分たちで解決方法を考えている途中なんです。
いままで僕はずっと黙って見てきましたが、すごくいいところまで来ています。
いま解答をあなたが教えてしまったら、この子たちが成長しているかどうか、分からないじゃないですか」
僕の意図が伝わったのか、コーチは黙って子供たちのプレーを見始めました。
子供たちが少しずつうまくこなせるようになってきたとき、彼がすごくうれしそうに子供たちを眺めていたのを覚えています。

お別れのときには、コーチとガッチリ握手をして別れました。「また、ぜひ来てくれ」と言ってもらい、最後は拍手で僕を送り出してくれました。
すごく気持ちのいい別れでした。僕はパラグアイ人のコーチの、最初の態度をすべて否定しようとは思いません。
自分たちのサッカーに対する情熱、プライドを感じましたし、そうした信念の元に強いクラブが成り立っているということを感じたからです。
きょうこの話を書いたのは、彼とのやり取りの中に「国際交流」の一つのヒントが隠れているような気がするからです。
「あれっ、どうしてお互い歩み寄れたのかなあ」と。

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