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第1回 ティールン君、色、そしてピラミッド ――カンボジアにて(Cambodia) >>そのときの写真はコチラ

10月上旬の4日間、僕はカンボジアを訪問しました。現役時代から4度目の訪問となります。
今回はユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の日本支部、電通、
そして日本サッカー協会による共同事業「アジアの子供たちにボールを届けるプロジェクト」への参加のためです。
このプロジェクトは「アジアのリーダーとして、日本がいま何をすべきか」という考えに基づき、立ち上げられました。

2002年、ワールドカップで日本はベスト16、韓国はベスト4という成績を残しました。
こうした実績を残したことで、今回のワールドカップ予選で、4・5という出場枠がアジア全体に与えられました。
ここで大切なのは、日本だけではなく、アジア全体のレベルの向上です。
日本を含めて、アジア全体で手を取り合いながら一緒に頑張ろう、という活動です。
そうすることによって、日本のサッカーのレベルも上がっていく、と僕は信じます。
何か動くことによって、物事は少しずつ活性化していきます。
小さな活動かもしれませんが、これがサッカーの活性化、ひいては国の活性化につながればいい。
そんな目的で立ち上げられた「アジアの子供たちにボールを届けるプロジェクト」は、
今回のカンボジアを手始めにアジア19カ国を回ろうという計画になっています。

今回、僕にとっては非常にうれしい再会がありました。
4年ぶりに再開されたカンボジアの「プレミアリーグ」の3位決定戦を、スタジアムで観戦していたときのことです。
2001年、僕がカンボジアで初めて行なったサッカー教室で出会った、スーン・ティールン君が、
僕がカンボジアを訪れていることを聞きつけて、突然僕に会いに来てくれたのです。
ティールン君が住んでいる場所から、そのスタジアムまではバスで2時間ほどかかります。思ってもみない再会でした。

初めて会ったときに14歳だったティールン君も、いまはもう18歳になりました。
翌日、14歳以下のプノンペン選抜を対象としたサッカー教室を行なう予定があったので、
ティールン君に飛び入りで参加してもらうことにしました。
ティールン君はそこで「何かお手伝いをしたい」と言ってくれました。
自分たちがやってきたことに対して、ティールン君は、その意味を見いだし てくれている。
自分たちがやっている活動に理解を示してくれて「協力したい」と言ってくれた。
彼がそういった言葉を言ってくれたことに対して、非常に感激しました。
実際には、翌日のサッカー教室ではティールン君には14歳の子供たちと交ざって、ボールを蹴ってもらいました。
僕自身が、彼の成長を見たかったからです。彼はすごく、すごく上手になっていた。
技術的に上手になっていただけではなく、集団をまとめ上げるのがすごくうまくなっていました。
ボールを蹴る彼の姿を見ながら「いい選手になったなあ」と感心していました。
僕がもし彼のチームの監督になったら、彼を守備的MFの位置で起用するでしょう。
技術的にも、性格的にもチームのバランスをうまく取れる選手に成長しました。

サッカー教室を行ないながら、子供たちみんなが、かつてより随分明るくなったようにも感じました。
4年前、初めてカンボジアの子供たちと触れ合ったときには、内戦の影響で、
大人、しかも外国人である僕が近付いてもまともに目を見てくれる子は少なかった。
先ほど少し触れましたが、カンボジアでは4年ぶりに「プレミアリーグ」が再開されました。
国にトップリーグがある、ということは大きな目的意識を植え付けられるものです。国の着実な歩みを感じました。
僕が最初に訪れたときは、あちこちに「立ち入り禁止」のグラウンドがたくさんありました。未処理の地雷が、たくさん埋まっていたからです。
当日、スタジアムにはたくさんのお客さんが入りました。現在では、サッカーだけではなく、フットサル人気もぐんぐん高まっているそうです。

今回、カンボジアで、僕は「色」を感じることができました。
最初にカンボジアを訪れたときには、色がなかったように感じたこと を思い出したからです。
かつては町に色がなかった。地方に行くと茶色、都市部に行くと灰色、というイメージが強かった。
今回、スタジアムには「色」がありました。笑顔もあれば、色もある。人が、少しずつ元気になってきた。
トップリーグが復活したことで、カンボジアに「ピラミッド」が再びできあがりました。
現在の日本にはJリーグがあって、その横に、日本代表という目標があります。頂点とその裾野によって形成されるピラミッドです。
今回届けたボールが、そのピラミッドを強める手助けになってくれればいいな、と感じています。

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